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200610/01

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コラム  「矯正歯科への思い 」 

6_1  私の診療室では少子高齢化社会の到来と共に以前に比べ30才~50才代の患者さんの占める割合が増えてきました。それに伴い患者さんの矯正治療に対する要求も変化し、また、私自身の矯正治療に対する考えも変わってきました。以前は、患者さんの要求も私の矯正治療の目的も形態(つまり見かけ)の変化に重きを置いていましたが、現在では如何に長く、つまり”高齢になるまで自分の歯で咬めるようにするか”と言う咀嚼機能の維持を最重要視するようになりました。

 20数年前、歯科医師になり矯正歯科を専門に勉強するようになった頃は、矯正治療を受ける患者さんは高校生までの若者がほとんどで、治療後の美しくなった口元、明るい笑顔が、患者さんと私の喜びでした。しかしその頃心のどこかで、これが本来の歯科医の仕事か?歯科医の本当の仕事は、歯の機能つまり噛むという機能を回復し、できるだけ長く維持する事ではなかったか?矯正歯科は本当にその歯科医としての仕事をしているのだろうかと少々引っかかる物がありました。かみ合わせが良くなればよく咬めるようになり、咀嚼能率も上がるだろうとは思っていましたが、患者さんから治療後に見かけが良くなったと言われることしばしばでしたが、よく咬めるようになったと言われることはほとんどなく、歯科医として何となく物足りなくずっと思っていました。
 そうした中、かれこれ5,6年前に歯周病が進行して歯が動揺し、十分咬むことができないと訴えられた60才の女性の患者さんを治療させていただく機会に恵まれました。その患者さんが治療後に「何でもおいしく食べられるようになった。お寿司屋でイカを食べて、イカがこんなにおいしい物とは知らなかった。今までずっと上手く咬めないから、硬い物は避けるようにしてきたので。」と言われたとき、やっと僕も本当の歯科医の仲間入りができたような気がしました。

 それ以来、できる限り処置歯や失活歯を抜歯し、健全歯で正常な咬合を作り上げ、”一生自分の歯で食べていけるようにすること”が私の矯正治療の第一目標になってきたのです。これは、決して形態を軽視しているというのではなく、正常な形態(咬合)を作ることが正常な機能を営むには必要であり、正常な機能を営むことが、また正常な形態を維持することになる。つまり、形態と機能は表裏一体で、どちらも正常でなければ正常な状態を長く維持することはできないと言うことなのです。

 矯正治療は、歯並びが気になる人だけが受ける特殊な治療とまだまだ一般的には思われがちですが、本来、矯正治療は咀嚼機能を改善し長期間維持させるための歯科治療の方法の一つで、悪い歯が有れば治療する一般歯科の治療と同様に歯並びが悪ければ誰もが受けるべき治療だと私は信じています。そして、一生自分の歯で物が食べられることで、本当に健康で長寿を全うできる社会の実現に矯正治療が貢献できることを願っています。

医療法人ハート樋口矯正歯科クリニック
河合 悟 6_1

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